固定資産を事業用に転用したら未償却残高はどうなる?
個人事業主で、開業前から使っていた車やパソコンを事業で使用しているという方は多いのではないでしょうか。それらの固定資産は事業用として経費計上できることをご存じでしょうか。ここでは個人事業主やフリーランスの方が知っておくと役立つ、事業用に転用した固定資産の経費計上方法や注意点についてご紹介します。
固定資産とはなにか?登録が必要なものと減価償却費の関係
資産には会計上“流動資産”“固定資産”“繰延資産”という3つの分類があります。法律上、固定資産は“土地、減価償却資産、電話加入権そのほかの資産で、政令で定めるもの”とされています。
具体的には土地や建物などの不動産、自動車、パソコンや応接セットといった備品が固定資産にあたります。固定資産とされるものにはそれぞれ法定耐用年数が定められています。たとえば、木造の店舗であれば22年、鉄骨鉄筋コンクリートの事務所は50年、自動車は4年、パソコンは4年です。30万円のパソコンを購入した場合、購入した年から4年間は毎年7万5,000円を減価償却費として経費計上できます。厳密にいうと最後の年だけは備忘価格のため減価償却費は7万4,999円となりますが、会計ソフトを使用していれば自動計算されるのであまり気にする必要はありません。
事業をしていると得られた利益に応じて税金を納める必要がありますが、経費をきちんと計上することで利益の総額を抑えることができます。納税の義務は同然に果たさなければなりませんが、経費計上できるものをせず無駄に多く納税することは避けたいものです。固定資産の減価償却は正しい納税額を算出するうえでも欠かせません。減価償却を計上していくことは、耐用年数をすぎた備品を買い替える備えにもなります。事業を行うのであれば、固定資産と減価償却費についてはしっかり認識をもっておきましょう。
未償却残高の計算方法とは
開業後に購入した備品や自動車であれば上記のとおり処理すれば問題ありませんが、もともと持っていたものを事業用に転用した場合は少し計算方法が複雑になります。会計ソフトで固定資産を管理する場合“種類と名称”“購入した日”“購入した金額”“事業割合”“法定耐用年数”を入力します。事業割合というのは社用車をプライベートでも使用している場合などに使います。
社用車とプライベート用の車は別で、プライベートでは一切使っていないのであれば事業割合は100%、事業とプライベート半々で使っている場合は50%と入力します。開業前から使用していた固定資産の場合は、転用時の未償却残高も登録しなければなりません。転用時の未償却残高とは、開業時にその固定資産にどれだけ価値があるかを法律に基づいて計算したものです。計算方法は法律で定められています。転用時の未償却残高算出に必要となるのは、購入日、事業転用年月日、取得価額、法定耐用年数の4つです。
まず、固定資産の購入日から開業日までの年月を出します。年未満は切り上げとなるので、たとえば開業の半年前に購入したものであれば1年として計算します。取得価額×90%×減価償却資産の償却率表を参照した償却率×購入から開業までの年数が転用時までの償却額となり、取得価額からその償却額を引いた金額が未償却残高となります。開業半年前に購入した30万円のパソコンなら、取得価額30万円×90%×償却率0.167×1年=4万5,090円が未償却残高ということになります。会計ソフトには転用時の未償却残高入力欄があるはずなので、上記の方法で算出した金額を入力しましょう。
誤って計算すると意図せず脱税を行う可能性があるので注意
計算を間違えてしまうと税額が正しく算出されません。単純な計算ミスでも結果として脱税になってしまい税務署から指摘が入り、場合によってはペナルティとして過少申告加算税や重加算税が課されることもあるので気をつけてください。
重加算税はとくに厳しい措置で、納付する税額の35%が課されます。確定申告後に間違いに気が付いた場合、3月15日までなら訂正申告ができます。訂正申告をすればペナルティを課されることもありせん。確定申告をe-Taxで行っている場合は、確定申告の期限内であれば修正したデータを再度提出すれば問題ありません。ミスが発覚した場合は確定申告の期限内に修正するとスムーズです。
ただ、税金の還付を受けるケースでは税務署で還付処理を完了しているケースもあるので、その場合は更生の請求を行う必要があります。処理状況について管轄の税務署に確認してみるとよいでしょう。更生の請求は5年以内に行えばよいので、過去分でも誤りを見つけた場合は請求が可能です。
まとめ
サラリーマンであれば税務処理はすべて会社が行ってくれますが、個人事業主の場合は自分で確定申告をしなくてはなりません。納税についての正しい知識は自分で事業を行ううえでとても大切なことです。開業前から所有していた車やパソコンも事業で利用するのであれば固定資産として計上できます。こちらで紹介した内容も参考にしながら正しく計算をして確定申告をしてください。
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